「契りおきし」その1
『うつつまぼろし』 「契りおきし」その1
このテキストは、歌物語トークゲーム〈うつつまぼろし〉の遊び方をイメージしていただくための読み物です。プレイヤー2人とGM1人が遊んでいるところをイメージして、書かれています。
……つまり、実際にプレイした記録ではないんです。
GM「というわけで、今日はトークゲーム『うつつまぼろし』を行います」
プレイヤーB「やんや、やんや」
プレイヤーA「変な合いの手だな>B。ところで『うつつまぼろし』って? つまらなかったら寝るぞ」
GM「TRPGの亜種の一つです。現在制作中で来夏にはそこそこ遊べるβ版が発表されそうです」
B「β版? ソニーのビデオデッキなの?」
A「コンピュータプログラムなどの関連語で、〈ほぼできあがっているけれどまだ動作テスト中で完璧じゃない〉くらいの意味だな。
来夏にβ版ということは、今日やるのはそれ以前なのか……。枕を持ってくるんだった」
GM「大丈夫ですよ。プレイヤー2人ですから、どんなシステムでTRPGをうやっても寝る暇なんて与えられない構造です」
A「それは多人数だと退屈で眠りそうなセッションが待っているということか?」
GM「それはともかく。
まだ制作中のα版ですので、キャラクター作成を行わず、アーキタイプを使ってセッションを行います」
B「初めてのシステムで一からキャラメイクするのは難しそうだから、それでいいよー」
A「たぶん、作成ルールができてないんだろうけれどな」
GM「アーキタイプを使った方が、キャラクターの傾向が予想できてシナリオを準備しやすいんですよ。キャラクター作成については、作成ルールができてからたっぷり作成テストを行いますよ>Aさん」
B「あー、私は『姫』だー。姫様ですよー、ぶぃっ」(←なぜかVサイン)
A「ふぅん。俺は『武骨者』か。戦えばいいんだな」
GM「あんまりよくありません。このゲームでは戦うと、たいてい、評判が悪くなります」
B「武骨者さんったら、この前、刀を振り回したんですって」
姫付きの女房(GM)「まぁ、野蛮ですわ。姫様、あのような下劣な方とはしばらくお会いにならない方がいいかもしれません」
A「……って、なんでそこまで言われなければならん! そもそもそんな世界だとは聞いてないぞ」
GM「そういえば、世界の説明をしてませんでしたね。これは失礼いたしました。お渡ししたアーキタイプの立場も含めつつ、『うつつまぼろし』の世界の話をちょっとだけしておきますね」
B「数頁にわたるような長い説明だとお絵描きはじめるからねー」
GM「……努力します。
このトークゲームは正式名称を『歌物語トークゲーム〈うつつまぼろし〉』といいます」
A「歌物語か……、『源氏物語』『土佐日記』みたいなもんだったっけ」
GM「後ろはちょっと違いますけれど、『源氏物語』『伊勢物語』のように〈和歌〉を軸とした平安時代から鎌倉時代に描かれた物語作品群のことをいいます。
そして、物語の舞台には、和歌が盛んだった平安時代の貴族社会がよく使われていました」
B「平安時代、和歌、古文に歴史……、わからなそう。うーん、キャラクターシートのイラスト欄狭そうだねー」
GM「ご安心ください。平安時代や和歌がわからなくても、なんとかなるように目指してます。今日のセッションでも大丈夫なようにしてきたつもりです。
必要最低限の世界背景はゲーム中にわかるようにしますから、ね? イラストはもっとキャラクターイメージ深まってからのほうがね?>Bさん」
A「時代劇だって、実際の歴史が完全に再現されているかというと時代考証的には嘘もいっぱいという話だしな。ゲームがやりやすいようにカスタマイズされてるんだろう。
そういうわけでだ、もう少し話を聞いてやろうぜ>B」
B「うーん、わかった。じゃ、姫はなにをすればいいのかな?」
GM「このゲームでは平安時代『風』社会で、都にいられなくなった貴族たちが地方に落ち延びていく旅路を描きます。
姫だと、たとえば、両親をはじめとする親族が死に果てるか権力を失ったため都にいられなくなり、地方に住んでいたために難を逃れた親族や親しい乳母の身内のもとへ身を寄せに行く、という話になります」
B「えー、姫、不幸みたい」(笑)
A「落ち延びる旅路ってことは、俺の武骨者もついてねぇんだな」
GM「んー、キャラの正確付けで変更もありですけれど、
『あやまって上役の息のかかった商人を処刑してしまった』
『皇宮を護る役目の君は、宴の晩に垣間見た女性に恋心を抱いていた。そのときから文をやりとりしていたが、その女性は大納言の娘だった。帝の目にかかることを願い宮廷に入れていた娘との仲を疑われた君は、あやうく都を飛び出たのだった』
なんてのはどうですか」
A「アーキタイプの解説にも地方に下る理由が書かれているな。どれどれ」
武骨者は、武芸好きの下級貴族だ。体を動かすことを疎い、堕落した生活を過ごす上司につい手をあげてしまい、都にいられなくなったため、ほとぼりを冷ますため東下りすることにした。
姫は貴族の娘である。姫の思いを寄せていた君が、流行病で死んでしまった。絶望のあまり後を追うことを考えた姫だが、女房の説得により、とりあえず諸国の寺を巡り君を忘れることにした。
B「アーキタイプ説明のほうがかっこいいかも? でも、失恋の絶望よりも頼るべき者がないという不幸のほうがロールプレイしやすそうだしねー」
A「じゃあ、俺が恋の話をとるということで、GMが口頭で説明した『大納言の娘との禁断の恋』にするぜ」