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3−7(街の風景)


 ある晴れた昼下り、祭の街の中。街頭に立って、一人の灰ずくめの貫頭衣に身を包んだ男が宗教的情熱をありありと顔に浮かべつつ、声を高らかに張り上げていた。
「……〈法〉は絶対なり。〈法〉こそ力なり。偉大なる〈法〉のもとに集い、支配者と戦おうではないか! もともと《神子》には〈法〉が無かったからこそ、我等は侵略されたのだ、支配されたのだ。汝らは、我等は守るために命を投げ捨てた兵たちのことを覚えていないのか!? 彼らがいたからこそ、我等は未だここに生を持っている。彼らに恥ずる心は無いのか、汝等よ。守り手たる彼らに恥ずる心があるならば、〈法〉のもとに立ち上がるのだ!!」

「どうも最近、〈法〉とやらを叫ぶものが多いなぁ」
 というのが主な聴衆の態度なのであるが、その全体主義的思考は少しずつであるが、若者たちの心に感染していっているようであった。
 とはいうものの、統治府のほうも黙っているわけではない。兵を繰り出して捕らえようとする。が、これがなかなか捕まらないのが灰ずくめの男である。
「〈法〉の力をお見せいたそう、帝国と首長国の方々。さぁ、見るがいい」
 男は傘を取り出し、いい天気だというのにさす。傘の帆は回転する。そして、傘にぶさがっている男は天へと招かれる。
「さらばだ〜〜、また会おう。ガルマースト大尉」

 この珍しい男の存在によって、祭はまた盛り上がっていたのだった。〈法〉を崇めるものたちは、今回の祭の終焉となった火事騒ぎのさいにも、気持悪いほどの統制を見せ、消火活動の手助けとなった。

 とうもろこしを焼く軍師は語った。(お客さんに)
「〈法〉の急な隆盛は、たぶん《神子》の力の衰えを象徴するのかもしれませんね」
「そんな怖いこと言わないでほしいザマス〜〜」
 お客のおばさんに強烈な目付きで睨まれたので、それ以上は語れなかったが。


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