3−5(神子の物語)
「トランのあとをついで《神子》になりたいというなら、わたしの言うことをよぉく聞いてね」
アラウネ様は力を求めてきたみなさんをぐるっと見渡して語りかけなさります。
「まずはここに4本の棒があるでしょ」
どこからともなく取り出した棒をみなさんにお見せになります。
「この赤いのをひいたら第一の試練は突破!」
先が赤くなった棒をみなさんに見せまする。
「で、もう一つの試練というのは、私を楽しませる遊びを教えてくれること。とっても楽しかった遊びを紹介してくれた人を《神子》にしてあげる」
「トラン様も今回の試練のようなことをなされたのですかな?」
野望に燃えた瞳でトラン様を見詰めて、ザースさんは尋ねました。
「えぇ」
「では、そのときはどのような遊びを披露なさったのです?」
「でもアラウネ様は飽きっぽい方ですので」
「何か言った? トラン」
アラウネ様は唇をとがらして、トラン様たちを横目にしなさりました。ですが、アラウネ様は追及もなさらずに仮面をかぶりなすって、
「アラウネ仮面、ここに参上!」
なんて感じで飛び回っております。
「実は私自身としましては、私が最後の《神子》ならば、それでいいと思っております」
トラン様は声を潜めなさって話されます。
「それは困る。《神子》の力をゆずられたくないのですかな」
ザースさんはなじっておりました。ミリオラーネさんはただただ神話級の世界にいるだけで、宗教的動揺を感じているのを若干隠し切れないようです。
「あなたが最後の《神子》になりたいというならば、我々を招かずにいればよかったでしょうに。なにゆえ招いたのです?」
「あの方、いえ、アラウネ様が《神子》の代替わりを望みなさったのですから、私としては反対しきれません。実際私も疲れていますし……。若かった頃ならば、反対しきるだけの活力もあったでしょうが……」
ポンペイさんの指摘に答えながら、トラン様は眼を伏せました。
「いえ、今言ったことは忘れてください。疲れていたようです、気の迷いがちょっと言葉に出てしまいました」
その頃、ドワーフはアラウネ様を背中に載せて馬をやらせれていました。二人とも楽しそうです。
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