現在のサイト:名付けの仕方
 < 親サイト: 読み物コーナー(9) < たまねぎ須永の部屋〈うつつまぼろし〉(0)

名付けの仕方

 ゲームキャラクター向けの名付けの話が割と好調だったので、身内の妊娠をきっかけに、リアルに赤ちゃんの名前の付け方を検討・提案していきます。

●機能性から
 名前のメインの機能は、名付け相手を他者と区別させ、認識させることです。
 そのためには、他人とは違った名前を採ることは念頭に置かれます。ですが、昨今の行き過ぎた名付け主にしかわからないような名前はいかがでしょうか。区別をさせるという機能は果たすかもしれませんが、認識させる際に不都合が生じます。
 人は読み(音)で名前を認識し、記憶します。名付け主にしかわからない名前だと、他者は読みを理解できず名前を認識するところまで至らなくなります。そのような名前が大挙した場合には、認識できない名前を集団として把握するようになり、他者との区別という機能さえも果たせなくなるでしょう。

 そうなると、他者に理解してもらえる上に、人とは違った名前という面倒なことを考えなければならなくなります。

●英雄から
 巨人軍の長嶋茂雄氏が現役時代には、彼にあやかって「茂雄」という名を与えられた方は多かったそうです。とすると、プレイヤーやGMがいろいろな作品のキャラクターにあやかった名前をつけるのも当たり前のことでしょう。
 しかし、つけた名前が他の人物にあやかったものだと、元ネタを理解している人にとってはイメージを持つ言葉になります。元ネタとなっている人物を思い出すわけです。元ネタの人物のようになってほしい、という思い入れが込められているのですから当然のことなのですが。
 全く雰囲気の違う世界(ゲーム世界、欧米社会など)の人物にちなんだ名前だと、おかしな雰囲気に襲われかねません。

●把握から
 音の並びも、脳裏で単語として意味を理解できると記憶しやすくなります。受験生が語呂合わせで、過去の出来事の発生年を覚えたりするのと同じ理屈です。
 逆に、意味が理解できないどころか、普段の語彙と違った傾向の音の並びだと記憶に残るどころか、記憶に残ろうという動きが拒否されるかもしれません。
 そんなわけで、自分よがりの凝りすぎた名前は避けたほうが無難でしょう。

 日本人は、ありがたいことに平均寿命80年を越えたりしています。
 80年もありますと、どんなジャンルのカルチャーも流行り廃りに巻き込まれます。一時期のブームにのっかった事物は、古びれてしまい、嘲笑の種になっていきます。  長生きすることを念頭に、最近の流行りにとらわれず、ちょっと前の世代の一見地味に見える名前を付けるのがベターでしょう。

●太古の言霊から
 このテキストを読む人のほとんどが母国語としている日本語は、単語を時代時代に入れ替えながらも、どうにか現在まで続いてきています。
 他者に理解してもらえる名前を考えるため、本ページ訪問者の大部分が知っている日本語的な名前を考えていくのがベターでしょう。日本語的な名前ならば、理解も得られやすそうですしね。

 さて、日本にはありがたいことにたくさんの古典があります。
 これらの作品内に出てくる単語を拾い上げ、そこから名前を付けてみるのはいかがでしょうか?
 私としては和歌集から拾い上げるのがおすすめです。
 理由としては、第一に数百年前の言葉を使うことで、歴史的に継承されてきた文学作品の持つ言霊の強さを名付け相手に分け与えられそうだからです。
 第二に、短歌は31音のなかに物語を、世界を作り上げる短詩です。短い音の中に豊かな世界を紡ぎ出すために、洗練された単語が選び出されています。その選び出された単語を使うことで、短歌内同様、単語本来の意味以上の奥深い内容が単語に与えられ、名付け相手に内容を与えることができるのです。
 さて、和歌は、もともと口ずさむものでした。ですから、口から実際に発音しにくい音が並ぶことは少なくなっています。現代の語彙から考えると発音しにくい場合もあるかもしれませんが、言葉遊びの少ない時代を狙って「古今和歌集」以前を見ると、発音しやすい言葉が並んでいると思います。
 〈発音しやすい〉ということは発音者の記憶に残りやすいということです。あなたの子供を、人知れず動き回る探偵さんや調査員さんにさせたいのならば記憶に残りにくい名前がいいでしょうが、そうではないでしょう? ということは、記憶に残りやすい名前はベターかと思います。

(了)

[このページの一番上に戻る]
[読み物コーナーの最初のページに戻る]
[管理人:たまねぎ須永へ連絡]