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『第1回 慈しみの星』


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 少女は泣いていた。
 世界が産まれた、「いにしえの蜘蛛」の誕生よりも、以前よりの孤独に耐えることが苦しくなったからだ。
 孤独、それは人を、性格を変えてしまうというのか。それこそがすべてを引き起こすという。

※ ※ ※

 星下暦329年春のことである。「いにしえの蜘蛛」より生れしバランガベルド大陸は未だ平安に包まれていた。
 しかし、大陸中が、平和だったわけではなく、大陸3大強国に包囲された地帯、通称〈小王国群〉では普段通り、戦いが行われていた。その結果、国が一つ滅びるといっても、ありふれたことであった。もっとも、ここで争いあっている国家はほとんどが、都市国家であったのだが。
 しかし、今日は少し違っていた。一季節ごとに、国家が入れ替わるこの〈小王国群〉において、建国100年を目前に控えていたガルデン王国が、セリア首国に滅ぼされてしまったというのだ。
 そのガルデン王国首府ガルデンは、人口千八百人程度であるというのだが、昔から《神子》と呼ばれる人物の力で、周辺各国の侵攻を防いでいた。されども、こたびの戦ではその力も働かず、セリア首国千人という兵力を支えること能わず、陥落した。

『つまはじきの長』
街角にて  カウル・マッドシグマは支配下に治めたガルデンの街を、巡回していた。一人、騎上の人となり、未だ放火された火がところどころに見える街を巡回している。
 略奪は戦争において、よくおこなわれる。世の常であるが、いつ滅びを迎えてもおかしくないこの地においては、略奪は厳重に禁止されている。
 だが、この火の手のあがっているガルデンの街から怨嗟のあがらないということになるというわけでもない。
「勘弁ください、そいつは親の代からのものでございますから……」
「そちらの都合などは聞けん、これは将軍パウロ・マウザ様への徴発物として頂いていくぞ」
 その風景を見るのが嫌で、また路地裏へと入っていくカウルは、セリアの騎士の一人であった。

 彼が騎士団団長に略奪(軍事用語で「徴発」と称する)をやめるよう進言したのは、つい先刻のことだ。そんな彼は、その場で一兵卒まで降格させられた。怒りとともに脱走してきたのが、現在である。

『満天の星空への誓い』
 セリア軍による徴発という名の略奪のすむころ、侵攻軍本陣を訪れる一人の人物があった。
 そやつは、鍛冶師風の風体をしていたものの、足取りを見れば人生の裏道を歩くものであることがよくわかる。
 その者が入って出てきてからいくらかたった後、トゥル・サエルダという騎士が呼び出されていた。
「何用でございましょうか?」
「そちを呼んだのは、他にないそちにしかできないことを頼もうと思うたからじゃ」
「しかして、私めにしかできないこととは?」
「イリア通りのとある廃屋にあるという短剣をとってきてもらいたい。極秘情報によれば〈小王国群〉だけではなく、大陸中に覇を唱えるのに役立つ力を秘めたものらしいのだ」
 こいつは大変なことを聞いたぞ、と思ったものの、トゥルは顔にそれを出さず、剣をパウロ将軍に差し出し、騎士の誓いを行うのだった。
「うむ、そちにそう言ってもらえて我は喜ばしく思うぞ」

 その頃、ガルデンの東南部にあるツルヌ通りではガルデンの騎士やらが、再起の機会を狙っていた。
「新たなる《神子》が生まれぬこの時期を、セリアの犬どもはいかにして知ったのであろうか」
「裏切者でもいたんだろうよ。そして、そいつの手で姫もきっと……」
「これ、滅多なことを言うのではない。姫様なら大丈夫のはずじゃ。このような事態のために、姫様には〈絶望の牙〉シェーナ殿をつけてあるのじゃから」
「とにかく、グレーヌ様さえいられればレジスタンスに加わる市民も多いはず。とりあえず、姫を捜索しようではないか」
 レジスタンス本部、そこでは平民に身をやつしたガルデン王国の上流階級や中流階級のもの、そして下層階級のものが身分の差を忘れずに論議しあっていた。
 戦いというものを知らなかった戦士たちは本部防衛、姫捜索、《神子》捜索、諜報の4部門に分かれることにした。
 彼らは、天の星々を仰ぎ見、剣をかざし誓った。王国再興を。

 公式には、この日、ガルデン王国は滅亡した。そして、ガルデン王家の血を引くのはグレーヌ姫だけとなった。これは〈絶望の牙〉の活躍により、王家大虐殺から逃れられたというのが、街の噂である。

※     ※     ※

 「いにしえの蜘蛛」が滅したとき、少女は涙した。声をたてずに泣いた。そばにいたものならば、すすり声くらい聞こえたかもしれない。が、誰もいなかった。
 その涙は、海となった。

※     ※     ※


『狐狸霧中』
 日のさすことなき暗室にて、男は一人うなっていた。男の前には、炎がある。炎、この部屋で唯一の灯りだ。
 その灯りの前で、男は一心にうなっている。灯りに照らされる男の形相は、凄みを感じさせるものがある。髭は下水鼠のようで、頭髪などは最早、烏の巣というほかあるまい。

苦悶
 灯り、というのは1mくらいの木で立方体に組まれたもので、上から見ると、真ん中が吹き抜けになっているようだ。その吹き抜け部分に、光源たる炎があった。炎は蒼かった。蒼い炎は、筒のそこにある数十の蛙や鼠の蒼さであった。
 男はやがて、ふところから紙筒を取り出す。中には、一本の赤茶色の糸が入っている。糸は細く、生物の毛のようである。
 丁寧に、男は毛をつかみ、己の口に運んだ。飲み込む。それを飲み込んだ。その過程においても、うなり続けている。
 男は変容を迎えていた。

 セリア首長国によるガルデン占領を迎えてから、一週間が流れていた。民の生活も表面上、戦前に戻りつつあった。
 だが、心は戻るはずなかった。100年近い平和の中で、この平和が破られるはずはないと思い込んでいたのだ。人々の心のうちには、旧支配者たるガルデン王家の姿が、未だ強かった。軍備を怠った旧王家を、セリアの支配者たちに対するのと同じように敵視するものも、いるにはいたが。その思想は若者に多かった。

 そのような思想の中、「グレーヌ姫」の存在はいかなる陣営からしても捜索対象になって当然である。彼女の人格性を求めるのではなく、旧王家の血筋という点が捜索対象となるのはいうまでもないだろう。
 盗賊、ディスト=バランティスもそんな一人だった。まだまだ駆け出しの盗賊たるディストが一山あてようというのも、当然の話である。
 そんな彼が、普段のように、ぶらぶらと馴染みの酒場に入る。知り合いに片手をあげて、挨拶をする。知り合いの男性は、彼を手招きする。
「昨晩、帰宅して中を見ると、一人女性が倒れていましてな」
「で、」
「薄汚い格好をしているのでございますが、磨けば光る珠のようなのです」
「ほー、おめぇにしちゃ、なかなかのツキだな」
「しかし、寝苦しそうなので様子を眺めてみますと、なにやら訳ありのようでして」
「まさか!」
「というわけで、これからうちにまいりませんか」
 こうして、古買商とディストは古買商の家へ向う。ときどき、後ろの気配を確認しながら向う。足は自然と急ぎ足となる。
 古買商の家はイリア通りにあった。その移動の際に、セリアの騎士とすれ違った。 古買商とディストは中に入る。古買商は鍵をかけた。

迎え
「御安心ください、グレーヌ姫」
 ディストが声をかけた。かけられた部屋の中に眠る少女は怪訝な表情で、彼らに目をむけなされた。ディストは、その目が人の値踏みをするものだということに気付いた。この目を世間知らずの姫様がやるもんなのかよ! ディストは心中で怪しんでいた。
「そなたが、この部屋の主人か。昨晩は世話になった。大儀である、これからも頼むぞぇ」
 少女が古買商にそう言うと、古買商は平伏した。少女の視線が、物言いたげにディストにからまる。悪寒が走った。
「実は俺を雇ってもらえないかなぁって思ったのですが……」
「よし、そなたを雇ってやろう。言っておくが、王国再興の道は楽ではないぞ」
「はぁ、ありがとうございます」

『あーだこーだ』
 〈知に飢えた狼〉亭という酒場の2階の一室。エルフの女性と、少年がいる。
「とりあえず、あなたに雇われることにするけど、つ、よ〜いバケモン出てくるんでしょうね」
「バケモノ自体は出てこないよ。でも、バケモノじみた敵は出てくるだろうね」
「あんた、この街で何をしでかすつもり?」
「《神子(「みこ」と読む)》を捜す、それだけのこと」
「何それ?」

唾が飛ぶ
「ふむ、お姉ちゃんのような武闘家では知らないでしょ。ぼくが説明してあげるね」
 《神子》とは、ガルデン王国の守り手たる不思議な力を持つ者のことである。《神子》は、古代の封印の管理人であり、その封印を管理する力でもって、ついでに封印の上にあるガルデンの街を守ってきたという。
「どうりで、ガルデンが長く続いているわけだわ」
「でも、《神子》はいなくなったんだ。だから、ガルデンは落ちた」
「あんた、物知りねぇ〜〜」
「いささか兵法をかじっておりましてな、なんちゃって」
「で、《神子》を捜すあてはあるの?」
「さて、今日はもう寝ましょう」

 セリア軍本陣よりでて来る黒衣の男、杖を持っている。杖は魔法使いの象徴とされている。いかにも魔術師でござい、と言わんばかりの男は神殿街へと足を運んだ。
「ここか、《神子》の住居と言われるのは……」
 男は、入口で人を入れぬようにしているセリアの兵どもに印綬を示す。中は略奪から防がれたかのようだった。
 不満足そうな顔をして、数刻後、男は外へと出ていった。
 陣に帰る途中、男は辻説法を見ることになる。辻説法をするのは、ドワーフの僧侶であった。
「偉大なる《神子》トラン様は、只今眠りにつかれておる〜〜。しかぁし、近いうちに、よみがえり、セリアの畜生どもに天罰をくらわすのじゃ〜〜!」
 ドワーフは唾をとばしながら、群衆の共感を勝ち得ていた。
「トランの忠実なるしもべ、バルク・エルカッシュが皆に告げん。今回の敗戦は、8年前に追放されたカエザル・シタデハイル男爵が《神子》様の情報を伝えたからじゃ!」
 群衆は、すっかりバルクの言うことに聞きふけていた。魔術師風の男、ザースもいささか疑いながらも聞いていた。
「そして、カエザルはシャウプ子爵として、占領軍の副将軍としてここに参っているのだ!」
 そこにセリア騎士数名が兵を50名ほど連れてやってきた。群衆は逃げる、逃亡する。バルクは更に、話す。兵たちは、バルクに打ち掛る。
 バルクは捕まった。

『星見る彼』
 ザースが帰陣したころ、一人の騎士が帰ってきたところだった。
「トゥルよ、よくぞ短剣をとってきてくれた。同期のカウルとは違い、よくやるのぅ何か、問題でもあったかな?」
「白髪の老人が、その廃屋で切り掛ってきたでございます。この老人、なかなか手強く、捕らえようとしたものの、斬り伏せるのがやっとでした」
「ふぅむ、むむむ。ま、よくぞ取ってきた。これで、そちは騎士隊長じゃ。さ、渡してたもれ」
 トゥル・サエルダがパウロ・マウザ将軍に、鈍く光を放つ短剣を手渡した。そして短剣を渡すトゥルに退室の許可を与えると、パウロは短剣を検分しはじめた。
 だが、トゥルは部屋を出ずに尋ねるのだった。短剣がどのようなものなのかを。
「いや、これはな、美術品じゃ。数百年前のピソという彫刻家が彫ったものなのじゃよ」
 不審な顔をして、トゥルは退室した。大陸中を震撼させる力とか言ったはずだが。
「入室よろしいでございましょうか?」
 許可を得て、入ってきたのは魔術師ザースと、商家出身の騎士クルミン・エジュンである。
「これは、クルミンとザース殿ではないかね。何のようかね」
 短剣を懐にしまいつつ、二人に視線を投げ掛ける。
「バルクというドワーフの僧が扇動をしていたので、捕獲してきました。ザース殿の言うところによれば、《神子》についてなかなかおもしろいことを言っていたそうなので、牢に入れておきました。ザース殿、《神子》の神殿についての報告でもいたしますか?」
「いい判断じゃ、クルミン。ザース殿も何か、つかみましたかな?」
 ザースはかぶりを振る。
「あると思っていたものが見当たらなかったぞ。おかげで、うさんくさい酒樽の記憶を探らねばならんわい」
「ますますいい判断だったな、クルミン。さてと、ザース殿、これを見てくだされ」
 パウロ将軍は、懐から短剣を出し、二人に示す。短剣は赫くかすんでいる。
「力が、物凄い力を感じますぞ!! これが《神子》の短剣か、《神子》の力の補助に過ぎぬもので、この力というのか!」
「はぁ、私には一向に何も感じませんが。ザース殿、そんなにすごいのですか。ところで、この短剣のことを知っているのは、我々以外には?」
 広い天幕の内にいる彼らは、知らぬ間に肩を寄せ合っている。声も低く、聞き取るのを難しくしている。 「とりに行ったトゥルと、カエザルじゃな。我等に情報をもたらしたカエザルは当然じゃがな」 「ならばトゥルは消えたほうがよいのではないでしょうか」
「そうじゃな。よし、クルミン、《隊長》殿を使うがいい。コメーテスのむじなが近くにいるだけで、へどがでそうじゃからな」
 うなずいて、クルミンは天幕から去る。ザースはと言うと、短剣の輝きを眺めている。《神子》の力ますます欲しゅうなったぞ! と強く短剣を握る。
「じっくり研究したく思うのですが、よろしいですかな?」
というところで、天幕の天井に穴ができた。そして、どこからともなく高らかな笑い声が!

突入
「どこじゃ!」「何者! 名を名乗られよ! ここをどこだと思っておる!」
 姿無き声は、静かに答える。慌てる将軍らとは対称的だ。
「天知る、地知る、人ぞ知る。人は私を夜の風にたとえる!
 怪盗 ポンペイ、 ただ今 見参!」
 ため息をついて、地上の二人は顔をあわせた。仕方なく、将軍は見上げる。
「知らんの〜」
「これだから田舎者は困る。ふ、まぁいいさ。こいつはいただいたからな!」
 声は去っていく。そこで、魔術師は短剣が手の中にないことに気づく。
「やられたの〜、ま、ザース殿しっかり取り返しておくれ」
 将軍がかららうような表情を浮かべながら、ザースの肩を叩く。杖を振り回しながら、荒々しく天幕を出ていく魔術師を見送りながらパウロは溜息をつく。
「この天幕気に入ってたのにの〜」

『大国より来たる者』
 風が吹く。埃や塵を巻き上げる。そんな風景を何度も見てきた。10年も戦場に慣れ親しんできた男には、親しい光景である。
 と、後ろに気配を感じ、振り返る。
「クリミン殿、何か御用ですかな。急用でなかったならば、君も一緒にどうですか な?」
「クルト顧問官殿、実はとある騎士に、反乱軍との内通の疑いがかかりましったものでして、その調査を願いたく思うのですが。騎士ということなので、身内の調査ではいささかまずいものでして」
「わかりもうした。しかし、セリア騎士団というのは不思議なところですな。ハハハハハ……」
 笑いながら立去る《隊長》クルトを見送る騎士、クルミンは大国の犬めが! と嘲笑を浮かべていた。
 そんなセリア軍に向って話をしている中年がいた。民家に押し入ったセリア軍の前で話す中年は、真打になったばかりのメサルト・ミグルスという咄家である。
「まいどばかばかしい話でございますが、こんな話がございます」
「手向う気だな! やっちまえ!」
というわけで、咄家は切られ、絶命した。略奪に夢中になっている慾望に忠実な兵卒を説教しようというからには、やはり実力がなきゃいけないわけだ。

『妙蘭妖舌』
 男が一人、商家の前に立っている。若く、腰には長剣をさげている。柄には赤い石がついている。神秘を知るものならば、その石から力を感じることができたろう。魔術師の杖のような力を。
「すみませんが、ザボックさんいるときいてきたのですが」
「ザボックっていうことはおめぇさまがあいつのとこの坊ちゃんかね。ま、入りねぇ」
 商家から出てきた町人に案内され、内に入る。商家に似つかわしくない地下へと案内されるうちに、フュルグという魔法戦士は興奮していた。フュルグは興奮を鎮めようと、左肩を叩く。幼い頃の剣の稽古中の傷だ。熱しやすい彼は、熱した自分のミスを思い出すため肩を叩く。その剣の師も、今回の戦ですでに亡い。
「ここが憂国団のアジトか。よっしゃ」
 両手で両頬を挟むように、はたく。気合いが入る。案内をした男は、戻っていった後だ。
 案内とは違う男が来る。フュルグか確認した後、男は別室に連れていく。そこには寝台がある。その上には、フュルグと同年代の男が寝かされている。血相も悪い。側にいる女僧侶も首を振っている。
「フュルグ、しょうもねぇところ見せちまったな」
「ザボック、どうしたんだ!」
 ザボックは、女僧侶の助けで、どうにか上体を起こす。胸には赤い包帯が巻かれている。ザボックが話すごとに、赤くなっていく。
「おまえ……、寝ろ!」

切迫
「へっ、自分のことは自分がよくわかってらぁ。俺はもう無理さ。従兄弟がどうして死んだかを、知っておいてもよかろうよ」
 ザボックは語る。盗賊ギルドの大勢がセリア側に回ったこと。セリアが《神子》の力を求めていること。《神子》の情報をギルドがセリアに売ったことを知ったがゆえに消されたこと。そして、姫がギルド加入の古買商に保護されたこと。
「そういや、セリアの本陣に忍び込んだとき、ゴットハルトの奴の部屋で泣く娘の声が聞こえたが、おまえの妹の声に似ていたな。確かめる暇もなく、このザマだ」
 そこまで話したところで、ザボックの上体は崩れる。口から、どっと血が吐き出される。包帯が赤くなり、寝台も染まる。女の僧衣も色を変える。
 フュルグの叫びもむなしく、ザボックの命の灯は尽きた。
「僧侶さんよ〜、どうにかできねぇのかよ〜、いい奴なんだよ、ザボックは」
 ミリオラーネ=ルノターンは、僧衣の染みも気にせず、別れの儀式を始めている。
「ごめんなさい。まだ、私にはそんな力は……」
「ちっきっしょう!」
 拳を石壁に叩付ける。赤いものが飛び散る。仇はぜってぇとってやる! 何度も何度も叩付ける。ミリオラーネは止めることができなかった。

※     ※     ※

 「いにしえの蜘蛛」の眼は星々となった。足は主な神々、8主神となった。
 人は言葉という「糸」を紡ぎ出す。「いにしえの蜘蛛」の末裔の中で最も強きものが、人だという。宗教はそう説いている。
 ならば、赫き糸は何を意味するのだろうか。ミリオラーネには分かりもしなかっ た。

※     ※     ※

『第1回 慈しみの星』完


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