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2−3(パペット・スターの物語)


 パペット・スターと名乗ったエルフの娘は、「古えの蜘蛛」を崇める聖印を下げた聖闘士を助け起こした。
「どうしたの?」
 道端で倒れていた女性聖闘士を〈知に飢えた狼〉亭まで運び込んだのだが、パペット・スターの介護もまだ効を見せない。ときどきうなされているのが気に掛かった。

「過労と精神的ショックのようです」
 と医者は見立ててくれた。とりあえず一晩様子を見てみよう、娘は思った。
 でも、アタイの嫌いなクモを崇める女を助けるなんて、なんでだろ?

「ありがとうございました」
 一晩寝たところ、聖闘士は起き上がれるところまで回復していた。やはり過労だったようだ。しかし、身のこなし、風格ともに只者ではないようだ、この女。
「ご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、お暇(いとま)させていただきます」
 そう言って、聖闘士は枕元に運ばれていた杖を支えに立ち上がる。
「ちょっと待ったぁ!」
 部屋から出ようとする女性聖闘士は、パペットのほうに振り替える。
「そういえば御礼がまだでしたね。見たところあなたは冒険者のようですし、これを差し上げますわ」
 そういって複雑なルーンの彫り込まれた指輪を渡す。
「そうじゃなくって! 迷惑をかけられてもいいから倒れていたワケを話しておくれ。それが駄目ならせめて名前くらい言うのが、礼儀ってモンじゃないのかい?」
「そういえばそうですね。せっかく助けてくださったことですし、名前をお教えいたしましょう。グレ・シェーナと申します」
「グレ・シェーナ! あの〈絶望の牙〉か! というと姫の護衛の女か。おもしろそうだからアタイも話にまぜてくれないかい?」
 シェーナは豊かな髪、まるで風になびかせてはいた蜘蛛の糸のような髪をさわりながら、先程まで横になっていたベッドに腰掛ける。パペットは部屋に1つ置かれている丸テーブルの側の椅子に腰掛けている。
「力をお貸ししてくださるようですし、喜んでお話しましょう」
 シェーナの顔が翳る。
「実は、グレーヌ殿下をお連れしてアタビス王家を頼ろうと、必死に進んでいたのです。ですが、アタビス目前というところでコメーテス帝国の追手に追い付かれ、姫を奪われてしまったのです。案内人も犠牲にしてしまいました。帝国の奴等よりも独り身を生かして先にここまで戻ってきました。あと3日もたてば帝国に連れられた姫も本陣に運ばれるはずです」
「それを一緒に救い出すのを協力してほしい、というわけだな」
「えぇそうです」
「レジスタンスの奴等はたよんないのかい」
「あのような組織には何人スパイがいるかわかったもんじゃありませんから」
「ふ〜〜ん」


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